2024年度の慶應SFC総合政策学部小論文は、4資料を使って10年後の日本を予測する問1と、政策3案を示して1案を詳しく論じる問2です。
問1では米国・中国との相対的関係、問2では政策の着想・期待効果・副作用などを踏まえた有効性の説明が求められます。
資料の読み取り、構成メモ、当塾作成例、答案の各文の役割を設問ごとに確認していきましょう。
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2024年度総合政策の問題については、こちらの動画でも解説しています。
この記事の要点
- 問1の資料選択:全5資料を読み、選んだ4資料の主題を予測へ結ぶ。
- 問1の比較:米国と中国の両方との関係から10年後の日本を論じる。
- 問2の答案:政策3案を示し、そのうち1案の効果と副作用を800字以内で論じる。
- 答案の確認:条件・根拠・自分の判断を一文ずつ照合する。
慶應SFC総合政策2024年度小論文で確認する基本情報2つ

問1と問2では、提出する内容が異なります。まず全体の条件と、5資料の読む場所を確認しましょう。
①:問1と問2の条件と提出物を分ける
最初に、問1の800字と、問2で選んだ1案の800字を分けて押さえましょう。問2には、詳しい論述に先立って3政策を挙げる作業もあります。
| 設問 | 題材(テーマ) | 求められた作業 | 解答形式・字数 |
|---|---|---|---|
| 問1 | 日本経済・技術と国際関係 | 全5資料を読み4資料を選ぶ。各主題を関係付け、米国・中国との相対的関係から10年後の日本を予測する | 自分の考えを800字以内 |
| 問2の3政策 | イノベーションと日本経済の活性化 | 日本政府の政策立案者として、3政策の目的・対象・手法を簡潔に示す | 3案の提示。選択案の800字論述とは別 |
| 問2の選択案 | 先に挙げた3案のうち1案 | 着想、期待効果、副作用・弊害などに触れ、有効性を説明する | 選んだ1案を800字以内 |
問1は将来予測、問2は政府の政策提案です。問2で使う資料は、問1で選んだ4資料に限定されません。
問題の入手方法や他年度の一覧は、過去問ガイドの総合政策学部の一覧で確認できます。
②:5資料の主題と確認ページを押さえる
資料は、次の五つの角度から日本経済を考える内容です。問1で書く4資料を決める前に、5資料全てを読みます。
| 資料・ページ | 題材(テーマ) | 読むときの着眼点 |
|---|---|---|
| 資料1・p4–5 | 持続的な成長とデジタル化 | デジタル投資だけでなく、制度・人材・情報保護など、利用を支える条件を見る |
| 資料2・p6–7 | 経済成長を支える金融 | 既存の融資の役割と、新しい企業の成長を支える資金の課題を分ける |
| 資料3・p8–9 | 米国の科学技術と世界との比較 | 米国の規模、中国の伸長、日本との比較を読む。掲載された統計の時点にも注意する |
| 資料4・p10–12 | デジタル基盤と競争 | 利用者やデータが集まる仕組みと、参入・乗換えを難しくする条件を読む |
| 資料5・p13–15 | ESG時代の企業と資本主義 | 企業の利益と社会・環境への影響、長期的な価値の関係を読む |
塾長資料を読むときは、成長を進める要因と、その働きを妨げる条件を別々にメモしてください。同じ「デジタル化」の話でも、設備の導入と、使い手や接続の条件では答案での役割が変わります。
慶應SFC総合政策2024年度問1の解答例と解説


問1は、4資料を使って日本の将来像を説明する問題です。資料を選ぶ理由から、構成・答案・一文ごとの解説へ順に進みます。
問1の条件を4資料・米中との比較・10年後に分ける
問1では、選んだ4資料の主題を、米国・中国との関係と日本の将来像へ結び付ける必要があります。4本の要約を並べるだけでは、自分の予測との関係が伝わりません。
- 読む範囲:5資料を全て読む。
- 使う範囲:4資料を選び、それぞれの主題に言及する。
- 比較の相手:米国と中国の両方を扱う。
- 予測の対象:出題時点から10年後の日本について、自分の考えを示す。
- 字数:800字以内で論じる。
予測するのは、出題時点から10年後の2034年の日本です。
米国や中国について長く説明すること自体が目的ではありません。両国との比較によって日本の位置がどう見えるかを、答案の中心に置きます。
問1で使う4資料の主題と予測の根拠を選ぶ
資料は、日本の将来像を説明できる組合せで選びましょう。
なぜなら、個別に詳しく説明できる資料を四つ選んでも、日本と米中の相対的関係へつながるとは限らないからです。
今回の作例は、資料3の研究開発の比較を軸に、資料1のデジタル化、資料2の成長資金、資料4の競争条件を組み合わせます。
「技術の規模」と「現場で価値を生む使い方」を分けて日本を考える組合せです。
まず全5資料の主題を一行ずつ整理し、比較に使う軸を決めてください。そのうえで、4資料と暫定的な予測を行き来し、関係の薄い箇所や説明の抜けを調整しましょう。
資料1のp4–5では、デジタル化による改善の可能性と、それを支える人材・制度の条件を読みます。資料2のp6–7では、新しい企業が成長するための資金の課題へ進みます。
資料3のp8–9は米国の研究開発の規模と中国の伸長、資料4のp10–12はデータ集積や乗換えの難しさが着眼点です。資料3の過去の統計と、10年後についての自分の判断は区別します。
用語の意味を補いながら資料へ戻る練習は、テーマの知識を答案に使う手順も参考にしてください。
問1の構成メモで比較から将来像へつなぐ
この作例では、米中との比較→日本の応用の可能性→制約→条件付きの将来像という流れで、日本の将来像を説明します。
| 段落 | 構成メモ | 主に使う根拠 |
|---|---|---|
| 第1段落 | 2034年の日本の位置を示し、技術の規模と利用を分ける | 設問の比較条件・自分の予測 |
| 第2段落 | 米国の規模と中国の伸長から、日本の役割を考える | 資料3p8–9 |
| 第3段落 | デジタル化と成長資金を、応用企業が育つ条件にする | 資料1p4–5・資料2p6–7 |
| 第4段落 | 大きな基盤への依存と接続条件を、発展の制約にする | 資料4p10–12 |
| 第5段落 | 現場での応用という将来像と、実現しない場合を示す | 4資料を関係付けた自分の判断 |
この答案例は、比較・可能性・制約・将来像の関係が伝わる5段落で組み立てています。結論を最後に置く場合も、資料から予測へ進む理由を説明しましょう。
構成メモの一般的な作り方は、書き方ガイドの答える順番を構成メモにする章で確認できます。


問1の当塾作成例を800字以内で読む
問1の答案例と字数
以下は当塾の答案例です。
資料1・2・3・4を使った、718字・5段落の答案です。
私は、2034年の日本は、研究開発やデジタル基盤の規模で米中を追う一方、生産現場や行政で技術を使いこなすことによって、独自の役割を広げると予想する。ただし、技術を持つことと、それを事業や生活の改善に結び付けることは分けて考える必要がある。
資料3では、米国の研究開発の大きさと、中国が急速に存在感を増す状況が示されている。この傾向が続けば、米中は研究や事業基盤を軸に競争を続け、日本があらゆる分野で同じ規模を目指すのは難しいだろう。日本は、両国で生まれる技術も取り込みながら、自国の現場の課題に適した使い方を蓄積する位置を占めると考える。
その可能性を左右するのが、資料1のデジタル化と、資料2の成長資金である。人手不足の現場で、業務の記録や企業間の連絡をつなぐ仕組みが普及すれば、既存設備を生かしながら仕事の進め方を変えられる。しかし、新しい企業に資金が届かず、試作品の後の事業拡大が止まれば、技術の価値は十分に実現しない。資金と導入機会が結び付く分野から、応用を担う企業が育つだろう。
資料4が示すデータの集積や利用者の囲い込みは、この見通しの制約になる。日本企業が米中の大きな基盤に依存し、利用条件や接続方法を選べなければ、独自のサービスを広げにくい。利用者が事業者を選び直せる接続条件を整えられるかによって、日本の企業が付加価値を得られる範囲は変わる。
したがって、10年後の日本は、米中と研究や基盤の規模で競いながらも、現場への応用で補完する国になると考える。その実現には、成長資金、開かれた接続の仕組み、技術を使う人材を組み合わせる必要がある。これらが伴わなければ、導入先としての依存が強まり、国内に残る利益や仕事は限られるだろう。
問1の各文を設問条件と資料根拠へ照合する
答案の文を、資料の要約・資料を結ぶ解釈・自分の予測に分けて読みます。下の文番号は、この作例の冒頭から数えた番号です。
| 文・冒頭 | 資料・条件との対応 | その文の役割と読み方 |
|---|---|---|
| 1文目「私は、2034年の日本は、研究開…」 | p3/資料3p8–9・資料4p10–12 | 【予測】2034年の日本の位置を先に示し、米中との規模の比較を答案全体の軸にします。 |
| 2文目「ただし、技術を持つことと、それを…」 | 資料1p4–5・資料2p6–7 | 【解釈】技術を生み出す規模と、現場で価値を生む使い方を分け、資料1・2をつなぎます。 |
| 3文目「資料3では、米国の研究開発の大き…」 | 資料3p8の研究開発規模・伸び | 【資料要約】資料3の過去の統計から、米国の研究開発の規模と中国の伸長を押さえます。 |
| 4文目「この傾向が続けば、米中は研究や事…」 | 資料3p8–9を出発点とする予測 | 【予測】その傾向が続く場合を考え、日本が全分野で米中の規模を追う難しさを説明します。 |
| 5文目「日本は、両国で生まれる技術も取り…」 | 資料1p4–5・資料3p8–9 | 【予測】米中の技術を取り込み、現場に適した使い方を蓄積するという日本の役割を示します。 |
| 6文目「その可能性を左右するのが、資料1…」 | 資料1p4–5・資料2p6–7 | 【条件】デジタル化と成長資金を、日本が応用力を伸ばす条件としてつなぎます。 |
| 7文目「人手不足の現場で、業務の記録や企…」 | 資料1p4–5の生産性・デジタル投資 | 【具体例】人手不足の現場で記録や連絡をつなぐ使い方を想定し、生産性の改善を説明します。 |
| 8文目「しかし、新しい企業に資金が届かず…」 | 資料2p6–7の資金供給・新興企業の成長 | 【制約】成長資金が届かない場合に、試作品から事業拡大へ進めなくなる経路を説明します。 |
| 9文目「資金と導入機会が結び付く分野から…」 | 資料1p4–5・資料2p6–7 | 【予測】資金と導入機会が結び付く分野で、応用を担う企業が育つという見通しを示します。 |
| 10文目「資料4が示すデータの集積や利用者…」 | 資料4p10–11のデータ集積・乗換えの難しさ | 【解釈】資料4のデータ集積と乗換えの難しさを、日本企業の発展を制約する要因に結び付けます。 |
| 11文目「日本企業が米中の大きな基盤に依存…」 | 資料4p10–12 | 【条件】米中の大きな基盤へ依存した場合に、利用条件や接続方法の選択が狭まると考えます。 |
| 12文目「利用者が事業者を選び直せる接続条…」 | 資料4p11–12の乗換え・接続・競争条件 | 【条件】事業者を選び直せる接続条件によって、日本企業に残る付加価値が変わると説明します。 |
| 13文目「したがって、10年後の日本は、米…」 | p3の相対的関係/資料1–4 | 【結論】米中との規模の競争と、現場への応用による補完という日本の相対的な役割をまとめます。 |
| 14文目「その実現には、成長資金、開かれた…」 | 資料1p5の人材・資料2p7の資金・資料4p11–12の接続 | 【成立条件】資料1・2・4の論点を、将来像の実現に必要な資金・接続・人材へまとめます。 |
| 15文目「これらが伴わなければ、導入先とし…」 | 直前の三条件/資料2・4からの判断 | 【予測】その条件が整わない場合は依存が強まり、国内の利益や仕事が限られるという見通しで締めます。 |
例えば、3文目は資料3の内容をまとめた文です。一方、4文目以降の将来の競争や、7文目の業務記録の例は、資料を受けて作例が展開した判断です。
資料4の仕組みを根拠にする場合も、「米中の基盤への依存が強まった場合」と、「資料が現在の米中支配を示している」は異なります。資料の説明より強い事実へ置き換えないようにしましょう。



自分の答案の「だから」の前後を見てください。前が資料の要約で、後が将来の予測なら、その間に必要な条件が書けているかを点検すると、根拠の飛躍を見つけやすくなります。
問1の別の答え方と読み違いを点検する
資料5を選び、社会・環境への配慮と長期的な企業価値を軸にする答え方も考えられます。ただし、選ぶ資料は4つにそろえ、米国・中国との比較と日本の予測までつなげる必要があります。
楽観的な将来像に限る必要もありません。成長資金や基盤への依存の課題が解消しない場合を予測するなら、どの資料のどの仕組みからそう考えるかを示します。
ここで分けたいのは、用語が分からないことと、条件や論理のずれです。5資料全てを書こうとするのは条件の読み違いであり、知識を増やすだけでは直りません。
自分の問題で試すチェック
- 条件:使った資料は4つで、それぞれの主題に触れているか。
- 比較:米国と中国の両方との関係から、日本の姿を説明しているか。
- 根拠:資料の内容と、そこから考えた将来の条件を区別したか。
- 説明:デジタル化や資金が、なぜ自分の予測につながるかを述べたか。
慶應SFC総合政策2024年度問2の解答例と解説


問2は、3案を示したうえで1案の有効性を論じます。目的・対象・手法をそろえ、効果と副作用まで説明する流れを見ていきましょう。
問2の政策3案と1案の論述の条件を確認する
問2は、3政策の提示と、選んだ1政策の論述を分けて取り組みます。3案全部を800字で詳しく説明する問題ではありません。
- 立場と目的:日本政府の政策立案者として、イノベーションによる日本経済の活性化を考える。
- 3案の提示:各政策の目的・対象・手法を簡潔に示す。
- 1案の論述:その3案から一つを選び、着想・期待効果・副作用や弊害などに触れて有効性を800字以内で説明する。
問1と同じ4資料を使う指定はありません。ただし、政策の背景を資料から説明するなら、資料の内容と、自分が加えた制度設計を分けることが大切です。
問2の政策3案を目的・対象・手法で具体化する
3案は、変えたい状況と、政府が働きかける手段の違いが見えるようにしましょう。
なぜなら、「支援を増やす」といった表現だけでは、誰のどの行動を変える政策かが分からないからです。
今回の作例では、新技術を使う機会、事業を広げる資金、参入や接続の条件を分けます。初期需要の案なら、目的は事業化、対象は開発企業と導入側、手法は政府が支える試用契約です。
自分の3案についても、目的・対象・手法を別々にメモし、政策名を入れ替えただけの案になっていないか見比べてください。完成した3案は、後の答案例にまとめています。



政策の対象は「日本全体」だけで止めず、どの企業や利用者の行動を変えるかまで絞ってみてください。そのうえで、政府が担当する理由と、企業自身が行う仕事を分けると、手法が具体的になります。
問2で選ぶ政策の着想・効果・副作用を構成メモに置く
選択案の論述では、手法が効果へつながる経路と、その効果を損なう条件を一緒に考えましょう。
なぜなら、政策名と良い結果を並べるだけでは、なぜその政策が有効かという説明にならないからです。
初期需要の案なら、試用の機会をつくり、開発企業の実績と利用側の判断材料を増やす経路を考えます。その一方で、選定の偏りや公的契約への依存も検討します。
書き始める前に、着想→手法→効果→副作用→有効性の判断をメモし、矢印の間を説明できるか確かめましょう。
| 段落 | 構成メモ | 条件・根拠 |
|---|---|---|
| 第1段落 | 政策1を選び、仕組みの全体像を示す | 先に提示した3案との一致 |
| 第2段落 | デジタル化と成長資金の課題から着想を説明する | 資料1p4–5・資料2p6–7と当塾の解釈 |
| 第3段落 | 課題募集、試用、評価結果の共有を具体化する | 独自の制度案・設備点検という仮例 |
| 第4段落 | 利用の展開から事業化への効果を説明する | 手法からの予測・費用対効果の確認 |
| 第5段落 | 偏りと依存を挙げ、基準公開や期限を考える | 副作用・弊害への言及と独自の実施条件 |
| 第6段落 | 効果と不利益を踏まえた有効性で締める | 問2の有効性の説明 |
副作用を挙げたら、それをどう抑え、なお政策が有効だと考えるのかまで説明すると、判断の理由が伝わります。


問2の政策3案と800字以内の当塾作成例を読む
目的・対象・手法をそろえた3案の答案例を見ていきましょう。
政策3案の当塾作成例
| 政策 | 目的 | 対象 | 手法 |
|---|---|---|---|
| 政策1:新技術を試す初期需要の創出 | 新興企業の技術を実際の利用へつなぎ、事業化を促す。 | 新技術を開発する企業と、導入を検討する公共機関・中小企業。 | 国が課題を公募し、公共機関での小規模な試用契約を支援する。性能・費用・利用者への影響を評価し、企業秘密や個人情報を除いた結果を導入候補へ共有する。 |
| 政策2:事業化を支える成長資金の供給 | 事業化や販路拡大に必要な資金が途切れることを防ぐ。 | 事業拡大段階の新興企業と、資金を供給する投資家。 | 民間の審査と投資を組み合わせた共同出資の仕組みを設ける。支援期間と成果の確認時点を定め、事業の進展に応じて継続・終了を判断する。 |
| 政策3:データ利用と接続の競争条件の整備 | 既存基盤への依存で新規参入や利用者の選択が妨げられることを減らす。 | デジタル基盤の事業者、新規参入企業、サービスの利用者。 | 市場ごとの問題を調査し、データ移転や接続の条件を明確にする。個人情報・企業秘密を保護しながら、不当な接続拒否や囲い込みへの対応を進める。 |
各案の本文は、政策1が140字、政策2が127字、政策3が144字です。
選択した1案の論述例と字数
政策1を選び、720字・6段落で論じた答案例です。
私は、政策1の、新技術を試す初期需要をつくる政策を提案する。国が公共機関の課題と開発企業を結び、小規模な試用から導入実績をつくる仕組みである。
資料1は、日本のデジタル化の遅れと、その改善が成長へ及ぼす可能性を示している。また、資料2は、新しい企業の成長を支える資金の課題を挙げている。私は、資金の供給に加え、技術を使う側が導入を判断できる情報を増やす必要があると考えた。実績の乏しい技術は、買い手が効果や不具合を見極めにくく、開発後も利用へつながらないおそれがあるからだ。
具体的には、国が公共機関から業務上の課題を集め、企業規模にかかわらず応募できる試用契約を設ける。例えば、設備点検の記録を共有する仕組みなら、確認時間や記録の欠落、運用費用を導入前後で調べる。企業秘密や個人情報を保護したうえで結果を共有すれば、他の公共機関や中小企業も自分の現場で使えるかを判断しやすくなる。
開発企業には製品を改善する機会と実績が残り、利用側には導入判断の材料が増える。その結果、役立つ技術が別の現場へ広がり、新しい事業の収入や次の投資につながると期待できる。ただし、試用したこと自体を成功とせず、費用に見合う改善があるかを確かめなければならない。
副作用として、選定が特定企業に偏ることや、公的契約への依存が続くことが考えられる。そこで、選定理由と評価基準を公開し、支援に期限を設け、成果が乏しい事業は終了する。既存の仕組みを使い続ける場合の費用とも比較する。
この政策は、単に資金を渡すのでなく、技術の価値を利用者が確かめる機会を増やす点で有効である。試用結果を次の購入や改善へ結び付け、支出と弊害を点検しながら進めることで、事業化に届く支援を目指せる。
問2の各文を着想・効果・副作用・有効性へ照合する
問2では、3案の提示が具体的かという点と、選択案の論述に必要な説明があるかという点を分けて読みます。
資料の課題を押さえたうえで、政府の働きかけを具体化します。
政策3案の各項目と手法の読み方
| 政策・項目 | 根拠・着想の箇所 | 作例で示していること |
|---|---|---|
| 政策1-U01・名称 | 資料1p4–5・資料2p6–7 | 【名称】資料1・2を踏まえ、開発した技術が利用へ届く段階を政策の中心に置きます。 |
| 政策1-U02・目的 | 資料1のデジタル活用・資料2の事業化 | 【目的】新技術の利用と事業化を促し、日本経済の活性化につなげます。 |
| 政策1-U03・対象 | 上の目的から選んだ政策対象 | 【対象】開発企業と導入側を挙げ、働きかける相手と変えたい行動を明確にします。 |
| 政策1-U04・手法第1文 | p3の政府政策/独自の手段 | 【手法】国が課題を集め、公共機関での試用契約を支援する仕組みを提案します。 |
| 政策1-U05・手法第2文 | 資料1p5の情報保護+独自の評価設計 | 【実施条件】試用結果を評価して共有し、企業秘密と個人情報を保護します。 |
| 政策2-U01・名称 | 資料2p6–7 | 【名称】資料2の成長資金に着目し、資金を供給する手段を政策の中心に置きます。 |
| 政策2-U02・目的 | 資料2の成長資金・リスクマネー | 【目的】事業化や販路拡大に必要な資金が途切れる状況を防ぎます。 |
| 政策2-U03・対象 | 資料2の新興企業と資金供給側 | 【対象】資金を使う新興企業と、資金を供給する投資家を分けます。 |
| 政策2-U04・手法第1文 | 資料2を受けた独自の制度案 | 【手法】民間の審査と投資を組み合わせた共同出資の仕組みを提案します。 |
| 政策2-U05・手法第2文 | 独自の審査・終了条件 | 【実施条件】支援期間と成果の確認時点を定め、継続・終了を判断します。 |
| 政策3-U01・名称 | 資料4p10–12 | 【名称】資料4の市場参加や乗換えの条件に着目し、利用者の選択を広げる案にします。 |
| 政策3-U02・目的 | 資料4の参入障壁・乗換え | 【目的】基盤への依存による参入や選択の制約を減らします。 |
| 政策3-U03・対象 | 資料4の複数の利用者・事業者 | 【対象】既存事業者、新規参入企業、利用者という影響を受ける主体を挙げます。 |
| 政策3-U04・手法第1文 | 資料4p11–12からの独自の手段 | 【手法】市場ごとの問題を調べ、データ移転や接続の条件を整えます。 |
| 政策3-U05・手法第2文 | 資料1p5・資料4p11–12+独自設計 | 【実施条件】情報保護と、不当な接続拒否や囲い込みへの対応を両立させます。 |
選択案の論述を一文ずつ読む
| 文・冒頭 | 資料・条件との対応 | その文の役割と読み方 |
|---|---|---|
| 1文目「私は、政策1の、新技術を試す初期…」 | p3の3案から1案選択/P1 | 【選択】先に提示した政策1を選び、論述する政策を明確にします。 |
| 2文目「国が公共機関の課題と開発企業を結…」 | P1の手法/資料1・2からの着想 | 【全体像】政府が利用側と開発側を結び、小規模な試用から導入実績をつくる案を示します。 |
| 3文目「資料1は、日本のデジタル化の遅れ…」 | 資料1p4–5のデジタル化・成長 | 【資料要約】資料1のデジタル化の遅れと、改善による成長の可能性を着想の出発点にします。 |
| 4文目「また、資料2は、新しい企業の成長…」 | 資料2p6–7の新興企業・成長資金 | 【資料要約】資料2の、新しい企業の成長を支える資金の課題をつなぎます。 |
| 5文目「私は、資金の供給に加え、技術を使…」 | 資料1・2をつなぐ判断 | 【着想】資金に加えて、利用者が導入を判断するための情報も必要だと考えます。 |
| 6文目「実績の乏しい技術は、買い手が効果…」 | 直前の判断を支える仮説 | 【理由】実績の乏しさから効果や不具合を判断しにくく、利用が進まない経路を説明します。 |
| 7文目「具体的には、国が公共機関から業務…」 | P1の対象・手法/p3の政府政策 | 【手法】国による課題募集と試用契約を具体化し、企業規模を問わず応募できるようにします。 |
| 8文目「例えば、設備点検の記録を共有する…」 | P1を説明する独自の想定 | 【仮例】設備点検の記録共有を例に、確認時間・記録の欠落・運用費用を評価項目にします。 |
| 9文目「企業秘密や個人情報を保護したうえ…」 | 資料1p5の個人情報保護/P1の独自設計 | 【効果】情報を保護して評価結果を共有することで、次の利用者が導入を判断しやすくなると説明します。 |
| 10文目「開発企業には製品を改善する機会と…」 | P1の手法からの判断 | 【効果】開発企業には改善機会と実績、利用側には判断材料が残ると、主体別に示します。 |
| 11文目「その結果、役立つ技術が別の現場へ…」 | 資料2p6–7の事業拡大の課題との接続 | 【期待効果】技術の利用が広がり、収入と次の投資へ進む経路を説明します。 |
| 12文目「ただし、試用したこと自体を成功と…」 | p3の有効性説明/作例の評価条件 | 【評価】費用に見合う改善があったかを確かめ、政策の有効性を判断します。 |
| 13文目「副作用として、選定が特定企業に偏…」 | p3の副作用・弊害への言及/P1の設計 | 【副作用】選定の偏りと公的契約への依存という、この政策で生じうる弊害を挙げます。 |
| 14文目「そこで、選定理由と評価基準を公開…」 | 直前の副作用への対応 | 【対応】選定理由と評価基準の公開、期限、成果に応じた終了判断で副作用を抑えます。 |
| 15文目「既存の仕組みを使い続ける場合の費…」 | 費用に見合う改善という判断 | 【比較】既存の仕組みを続ける費用とも比べ、導入の価値を判断します。 |
| 16文目「この政策は、単に資金を渡すのでな…」 | 第2〜5段落の理由と手法 | 【有効性】利用者が技術の価値を確かめる機会を増やすことに、この政策の意義を置きます。 |
| 17文目「試用結果を次の購入や改善へ結び付…」 | 期待効果・副作用・評価条件の統合 | 【結論】支出と弊害を点検しながら、試用結果を購入や改善へつなぐ政策として締めます。 |
3・4文目で資料の課題を要約し、5文目から政策を考えた理由へ進んでいます。情報不足という課題の捉え方を、試用契約と設備点検の例で具体化しています。
13文目では副作用を示し、14・15文目で実施条件と比較の方法を補っています。副作用を挙げた後も、最後まで政策の有効性を説明する流れを保っています。



「効果が期待できる」と書いた箇所の直前を確かめましょう。誰が何を判断できるようになるのか、どの行動が変わるのかがなければ、政策と効果の間の説明を一文補ってください。
問2の別案と政策の読み違いを点検する
政策2や政策3を選んで論じることもできます。政策2なら資金が届く仕組みと投資判断、政策3なら新規参入や利用者の選択が変わる仕組みを掘り下げます。
その場合も、期待効果だけでなく、不適切な支援先の選定や、接続の負担・情報保護への影響など、案に応じた弊害を考えます。今回の政策1の副作用を、そのまま別案へ貼り付けないでください。
例えば「新興企業を応援すれば経済が成長する」だけなら、根拠と効果の間の説明が不足しています。一方、三つの案を二つしか示さないのは、知識より先に解答条件を直す必要がある問題です。
自分の問題で試すチェック
- 3案:各案の目的・対象・手法があり、別の政策として違いを説明できるか。
- 選択:詳しく論じた政策は、先に挙げた3案の一つか。
- 効果:手法によって誰の行動がどう変わり、経済の活性化へつながるか。
- 副作用:その案に固有の不利益を考え、有効性の判断へ戻れているか。
- 字数:選んだ1案の論述が800字以内か。
慶應SFC総合政策2024年度の答案を確認するポイント3つ


見直しは、条件・根拠・政策の説明の3点から始めましょう。自分の答案のどの文が設問に答えているかを確かめます。
①:資料数・政策数・字数の条件漏れを確認する
見直しでは、考え方の良し悪しに入る前に、提出する内容がそろっているかを確認しましょう。
なぜなら、書いた主張がもっともらしくても、必要な資料数や政策数の不足は別に残るからです。
問1なら4資料の主題と米中双方への言及、問2なら3案の提示と1案の800字論述を確認します。長い論述があっても、政策提示部分が空なら両方の作業を終えたことにはなりません。
設問の要求と自分の答案を横に置き、満たした条件に対応する文や項目を指で追って確かめてください。全設問を先に確認する方法は、時間配分記事の設問条件を確認する章へ進めます。
②:資料の事実と10年後の予測を分ける
資料にある状況と、自分が考える将来を分けて確認しましょう。
なぜなら、現在や過去の傾向があることだけでは、そのまま10年後の結果が決まるわけではないからです。
例えば、資料3の研究開発の比較から日本の立場を考えるなら、その傾向が続く条件や、日本がどの分野で役割を持つかを説明します。
過去の統計を2034年の実績のように書くのは、資料の読み違いです。
自分の答案へ戻り、要約の文と予測の文の間に、条件や理由があるかを確かめてください。知らない用語は調べ、つながりの不足は説明を補うというように、直す内容を分けます。
③:政策の効果と副作用の説明を確かめる
政策案は、効果と不利益を踏まえて、なお有効と考える理由まで確かめましょう。
なぜなら、副作用があると書くだけでは、その不利益をどう扱って政策を進めるのかが伝わらないからです。
試用支援の例なら、利用の判断材料が増える効果に対し、選定の偏りや支援への依存が問題になります。
基準の公開や支援期限を置いても負担は残るため、費用に見合う改善を確認する判断も必要です。
自分の案についても、手法→行動の変化→効果を読み返し、不利益を挙げた後に有効性の判断へ戻れているかを確かめてください。
慶應SFC総合政策2024年度の答案を学びにつなげる当塾の指導2つ


知識を答案に使う練習と、書いた答案への具体的な指導を組み合わせます。当塾の講義と添削が、それぞれどの課題を補うかを紹介します。



解答例と自分の答案の違いは分かっても、どちらの考え方が設問に合っているのか判断できません。
①:講義で資料を読む知識と考え方を補う
当塾では、知識を学ぶことと、設問・資料を読んで答案へ使うことをつなげて指導します。
なぜなら、デジタル化や金融の用語を覚えても、問1の将来予測や問2の政策の理由として説明できるとは限らないからです。
講義では小論文の基本やSFCの過去問、問題の背景にある考え方を学びます。
今回の問題なら、資金の課題を学び、資料のどの記述から政策や日本の将来像を考えるかを練習します。
SFC特化コースでは全65本の講義動画を案内しています。講義内容と、自分が補いたい知識・資料の読み方が合うかを、SFC小論文の講座・添削でご確認ください。
②:塾長の添削で条件と根拠のずれを確かめる
答案例との差を自分で評価できないときは、当塾へご相談ください。
なぜなら、結論が例と違うことよりも、設問条件を満たし、資料を根拠に自分の考えを説明できているかを確かめる必要があるからです。
塾長の後川慶一が、設問の指定・資料の該当箇所・あなたが書いた文を照合します。
問1なら米中との比較や4資料のつながり、問2なら政策の目的・対象・手法と、期待効果までの説明を確認します。
そのうえで、どの記述を根拠にし、なぜその部分を補う必要があるかを伝えます。
単に解答例へ近付けるのではなく、自分の答案の条件漏れや論理の飛躍を見分け、次に何を確かめるかを整理する指導です。
添削で指摘された部分を補って、自分の答案を確認し直します。その上で、新たに得た視点を次の答案に活かしていきます。
- ミニマム:講義動画と小論文添削を中心に、自分で学習を進めるプラン。
- スタンダード:講義・添削に、コンサルティングや質問・相談などの学習支援が加わるプラン。
- プレミアム:学習全般の支援に加え、完全個別授業も含むプラン。
添削回数は、ミニマムが月2回、スタンダードが月3回、プレミアムが月4回です。相談と完全個別授業は同じ内容として扱わず、必要な支援をプランごとに確認してください。
まずはSFC特化コースの講義・添削・質問・個別授業の内容をご覧ください。自分の答案で判断に迷う箇所があれば、無料説明会で学習状況と併せてご相談いただけます。
担当する塾長の経歴・指導方針は、後川慶一のプロフィールをご確認ください。



相談したい箇所には、資料の何ページを根拠にして書いたかも添えてみてください。「説明が足りない気がする」だけよりも、自分がつなげようとした理由を確かめやすくなります。
慶應SFC総合政策2024年度小論文のよくある質問


問題の入手先、資料の選び方、字数の条件など、演習前後に確認したい疑問をまとめました。
【まとめ】慶應SFC総合政策2024年度は資料の選択と政策の有効性を確かめよう


2024年度総合政策の小論文では、問1の将来予測と、問2の政府政策の提案を分けて練習しましょう。
解答例の結論を覚えるより、自分がどの条件・資料からその説明へ進んだかを確かめることが大切です。
この記事のまとめ
- 問1:5資料を読み4資料を選び、米国・中国との関係から10年後の日本を論じる。
- 問2:目的・対象・手法のある政策3案と、選択1案の800字論述を分ける。
- 根拠:資料の内容と、自分の予測・制度設計を区別する。
- 次の学習:指摘された不足を補って答案を確認し、新しい視点を次へ活かす。
次の演習では、総合政策2025年度の解説と比べて、設問が求める作業の違いも確かめてみてください。他年度の問題の入手先は、過去問ガイドにまとめています。
自分の答案で条件や根拠のずれを判断できないときは、当塾へご相談ください。SFC小論文の講座・添削で支援内容を確認し、必要な練習を整理しましょう。
湘南藤沢小論文アカデミーSFC特化コース
「読む力」を、「書く力」に変える。
慶應SFC卒、指導歴20年の塾長がパーソナル指導で受験まで伴走します。
塾長・後川慶一が直接担当
学び方から、答案の改善まで。









